授業中、先生の声がこんなにも耳をすり抜けるのは初めてだ。 別に勉強は嫌いじゃない。 授業だって、先生の声に耳を傾けながらしっかり板書をする。 いつもの私ならそう。 でも、今日はちがう。 ぼんやり黒板を見つめ、動かない右手に違和感も感じない。 動くとするなら、たまにチラリと遠くの席に座る大翔くんの後ろ姿を見るくらい。 3年生になって、大翔くんとは席が離れた。