他愛もない話をしながら食事を済ませると、志信はいつものように薫を後ろから包み込むように抱きしめて、鼻先を薫の頭にくっつけた。

(薫の匂い…。久しぶりだ…。)

「もう…また…。恥ずかしいって言ってるのに…。」

「薫の恥ずかしがってる顔、めちゃくちゃかわいい。」

志信は薫を抱きしめて頬や耳、首筋に何度もキスをする。

「くすぐったいよ…。」

「会いたかったんだよ。薫を思いっきり抱きしめたいって、ずっと思ってた。やっと会えたんだから、もう少し幸せかみしめさせて。」

「ごめんね、ずっと会えなくて。」

「薫はさ…オレに会いたいって、少しは思ってくれた?」

志信は薫の肩口に顔をうずめて、切なげに尋ねた。

「思ってたよ。私も志信に会いたかった。」

「ホントかな…。」

「ホントだよ?」

「そっか…。なら良かった。」

「なあに、それ?」

薫はおかしそうに笑う。

(薫はオレと会えなくても不安になったりはしないのかな…。)

こんなに好きなのは自分だけなのかも知れないという不安が、また志信の脳裏をかすめる。

(どれくらい好きだって言えば、この気持ちが伝わるんだろう…。)