梨花は気の毒そうに薫を見つめている。

石田はタバコに火をつけて、煙を吐き出した。

「卯月さん…。アイツが一緒に暮らしたいって言った時、なんで断った?」

「石田さん…今そんな事…。」

梨花が止めようとしたが、石田はやめなかった。

「アイツはずっと悩んでたよ。今の自分は仕事じゃ卯月さんに敵わないから、自信がなくてプロポーズもできないって。いつか仕事を理由に卯月さんに捨てられるんじゃないかって。」

「志信がそんな事を…?」

「それでもアイツは、卯月さんが好きだから一緒にいたかったんだよ。卯月さんが忙しくてなかなか会えないから一緒に暮らそうって言っても、断られたって落ち込んでた。卯月さんが重い役職について忙しいのはわかってる。でもオレはもっと、卯月さんにアイツの気持ちを大事にして欲しかった。」

石田の言葉に、薫の胸は切り裂かれるように痛んだ。

「……ごめんなさい…。私、なんにもわかってなかった…。」

「石田さん!!卯月さんを責めるのはもうやめて!卯月さんだってつらかったはずなの!」

梨花がたまらず声をあげた。

「卯月さんが笠松さんをすごく好きだった事も、笠松さんが卯月さんをすごく大事にしてた事も、私は知ってるの。今だって卯月さんは笠松さんが好きで、すごく悲しいのに…。卯月さんだけが悪いみたいな言い方しないで!!」

普段はおっとりしている梨花の剣幕に石田は驚きを隠せない。