「土曜日って、何かあんの?」

「毎週土曜日はバイトがあるのよ」

「……もしかしてバイトって、誕生日プレゼントの為?」

 十二月二十五日は康平と綾香の誕生日で、一月一日が健太の誕生日だ。十二月二十五日に、三人の誕生パーティーが綾香の家で行われる予定になっていた。

「そう。ただ、バイト先は近所で、親戚の喫茶店なんだけどね」

 亜樹がそう答えた時、次の授業のチャイムが鳴った。



 数日後、部活が終わって康平が家に着くと、母親が玄関の前に立っていた。

「二十番以上は上がらなかったけど、お父さんがね、康平が頑張ってたから買ってやれって言ってたのよ。お父さんにお礼を言っときなさいね」

 母親は、そう言って携帯電話のカタログを康平に渡した。

 康平は、携帯電話を買って貰える事よりも、今回頑張った自分を見て貰えた事が嬉しかった。


 康平が居間へ入ると父親がいた。

「と、父さん、あ、有難う」

「け、携帯を持った途端に、ゲームばっかりするようだったら、ぼ、没収するからな」

 照れ臭くなった康平がどもりながら言うと、父親もどもりながらそう答え、急に新聞を読み始めた。康平のシャイな性格は、父親譲りのようだ。