あの時感じた情けなさ、恥ずかしさ、気持ち悪さがよみがえる。



早くこの場を離れればよかったのに。



喉元まで出かかっているこの黒いものを放出しないと、

どうにかなってしまいそうだった。



「うるさいな」



「何? 人が心配してんのに」



「お母さんにはとやかく言われたくない!」



「は?」



「私見たよ。よくわかんないおじさんと家の目の前でキスして……」



そう言いかけて、私は急に息がつまり、続きを口から発することができなくなった。



「……っ」



私を蔑んだような目で見る母の後ろ。


スーツケースを片手にしたお父さんが、無言のまま突っ立っていた。