母の表情は怒りに満ちていた。


でも、どうしようという焦りよりも、面倒くささの方が勝ってしまう。



「別に、友達の家」



母を横をすり抜けて、居間へ。


すると、後ろを追いかけられた。



「いつもと匂いが違う」


「シャンプー借りただけだし」


「高校入って浮かれてるのはわかるけど、変な友達と付き合わないでよ」


「……は? 意味わかんない」



冷静に言葉を発したけど、どろどろとした思いが体を巡っていた。



確かに連絡をしなかったのは悪いけど、

あんなことをしていた母に怒られるのは嫌だった。



そして一吾くんのことを悪く言われたみたいで、イラッとした。


(まあ。確かに変な友達かもしれないけど……)



一度、母をにらみつけてから、無言で自分の部屋に足を進めたが、


「どうせ男のとこでも行ってたんでしょ」


と半笑いの母に言われてしまう。



その瞬間、車の中で知らない男とキスしていた母の姿を鮮明に思い出してしまった。