ぎしぎしとベッドらしき何かが軋む音も聞こえた。
『お母さん!! お母さん!!』
その時の僕は何も知らないガキだった。
母に何らかの危険がせまっていると思い、
何度も何度もその扉を開けようと、必死になってドアノブを回し扉を引いていた。
もちろん扉を開ききれるはずはない。
ガシャンガシャンと音を鳴らしながら、
強固なチェーンが、緩んでは張ってを高速で繰り返すだけだった。
『お母さん!』
どれくらい叫んだ頃だろうか。
扉の奥、重い足音がこっちに向かってきた。
得体の知れない恐怖を感じ、体が固まってしまう。
がちゃりとチェーンが外される音が鳴り、ゆっくりと扉が開かれた。