ぼくらのストロベリーフィールズ




一度だけ、一吾くんは高校を早退してきたことがあった。


聞くと、体調が悪くて保健室に寄った、とのこと。



私は気になって、忘れ物を届けに来たことにして彼の高校に行った。



『あの、私、一吾くんと、一緒に住んでる者でして……』


と緊張しながら保健室のおばあちゃん先生に話しかけると、彼女は温かいお茶を出した後、笑顔を向けてくれた。



授業中にうとうとしてしまった一吾くんは、突然ひっと悲鳴をあげて椅子から落ちたらしい。


理由は、怖い夢を見たから、とのこと。



『夢の内容は教えてくれなかったけど、彼は心の奥に何かの不安を抱えているようね』


『はい……』


『お互い依存状態にならないよう、気をつけながら彼と付き合った方がいいわよ』



おばあちゃん先生は優しい顔と声で、私にそう伝えてくれた。



もうマザコンじゃねーよ、と彼は言っていたけど、長年一緒にいた母親をそう簡単に忘れられるわけがない。



私は絶対に一吾くんから離れたりしない。


そう強く思うものの、どこかで気持ちにブレーキをかけないと、私は彼と四六時中一緒にいてあげたくなってしまう。



でも、彼の心を完全に理解することはできない。


お互いがそれぞれ一人の人間だ。



要は、私は私のままで、一吾くんを好きでいようと決めた。



その方がきっと、一吾くんの心のバランスを保つことができるんだと思う。


彼もまた、私に頼りきって生きることを望んでいないから。