その日の食後のデザートは、ガラス皿に積まれた真っ赤なイチゴだった。


僕は膝の上で手を結んだまま、うつむくことしかできなかった。



『一吾くんはデザート食べないのか~? 遠慮しなくていいぞー』


『お父さん、一吾くんはイチゴが苦手なんだって』


『そうなのかー? せっかく同じ名前なのに』



別に食べられない訳じゃないけど、

自分の名前をよくバカにされていたため、僕はその果物を好きになれなかった。




居間で、のばらと一緒に宿題を進めていた時。



『そんな仲良くさせない方がいいんじゃない? あそこのお母さん、苦手なんだけど』


『そうかー? でも小学生が1人で留守番なんて、危ないだろ?』



という会話が、廊下から聞こえてきたことがあった。



気まずい思いをしていると、のばらは僕の手をぎゅっと握って、


『気にしないでいいから。私は一吾くんがいた方が楽しいし』と言ってくれた。



優しくしてくれて嬉しい気持ちはあったが、


同時に、のばらの家庭がうらやましくて、どこか悲しい気持ちにもなった。