重たい灰色の雲が広がっていて、気温は低いのにやけに湿度が高い日だった。
学校帰り、よく絡んでくる3年女子と一緒になった。
おごってくれたアイスと引き換えに、元カレに対するグチを聞かされる。
僕は適当にあいづちを打っていたけど。
『一吾ちゃーん、ちゃんと聞いてるー?』
『聞いてますよ、大変そうですね』
そいつは何かが不満なのか、『ぶぅぅーー』と口を尖らせた。
1つ上の男子に面白いヤツがいないせいで、
ゆーたさんとリーさんが卒業してから、3年女子にアプローチされることが増えた。
ぽつり、ぽつり、と水滴が雲から漏れてきた。
『雨だー! やばいじゃーん! 家こっからすぐだからおいでー』
彼女はミニスカートをひるがえし、強引に僕を家に連れ帰った。
誰もいないよーと言われ、嫌な予感はした。
その予感の通り、気がつくと僕はベッドに押し倒されていた。
『一吾ちゃんってカノジョいんのー?』
『いないっすけど……』
『じゃー、うちとしよぉー』
ということで、あれよあれよという間に初めてを奪われてしまった。
行為のあと『えへへー』と彼女は布団にくるまり瞳をうるわせ笑っていた。
全身から力がぬけている僕は、薄暗い部屋の空気をぼけーっと眺めることしかできなかった。
彼女に対して何の感情も生まれなかった。
空っぽな状態の自分に反して、胃の中が次第にむかむかしてきた。
さっきのアイスがあたったのだろうか。
『……帰る』
『えー? もー行っちゃうのー? また来てねー』
急いで制服を着た僕は、大粒の雨が降る中、走って家に帰った。