ぼくらのストロベリーフィールズ




朝方、家に帰ると、母の彼氏が朝ごはんを準備していた。


仕事に行く直前なのか、高そうな細身のスーツに、ワックスで全体を後ろに流した髪型で。



母は飲み疲れのようで、まだ爆睡中。



『お、ちょうど良かった。一吾くんも食べる?』


『いい』


『お腹すいたでしょ? 成長期なんだからたくさん食べないと』



無言をつらぬこうとしたが、ぐーと腹の音が鳴ってしまった。


仕方なく2人で食卓を囲むことに。



ハムエッグのトーストに、オニオンスープ、食後にはコーヒー。



朝からこんな意識の高いメニューを食べたことのない僕は、胃もたれを覚悟しながら口に入れた。



『今度、お店休みの日に3人で映画でも行こうよ』


『おれはいい。2人で行けば?』



『そんなこと言わないでさー。だってお母さんが言ってたよ、

今までずっと一吾くんをほったらかしてきたからたまには家族らしいことしたい、って』



そう言って、彼氏は広げた新聞紙の隅から僕をちらっと見た。


顔はにこっと笑っているけど、相変わらず目に表情がない。



構わず、ごちそうさまとつぶやき、僕は席を立った。



この彼氏に対する不信感は一体何なのだろうか。



軽く眠った後、シャワーを浴びようと洗面所に向かった。


すると、あー頭痛っ、と酒焼け声をした母が、化粧水をつけていた。



『飲みすぎじゃん』と僕が声をかけると『しょーがないでしょ。仕事なんだから』と母は半笑いで言った。



キャミソールの肩ひも越しに見えたのは、10円玉大くらいの赤紫色の斑点。



なにこれ、と聞くと、酔っぱらって派手に階段で転んだ、とのこと。



その後すぐに『学校は?』と聞かれたため、僕は無言で風呂場に入った。