「今日ありがとね。すごい楽しいよ」
2人でいろいろ回っておいでと達也さんたちに言われ、
この牧場を見渡せる展望台に一吾くんと上った。
細い丸太で組み立てられた柵に手をかけ、目下に広がる緑色や、お花畑の赤や黄色を眺める。
奥の駐車場には、ところどころ穴の開いた障子のように、まばらに車が停まっていた。
「おれ何にもしてないし。達也さんたちのおかげ」
柵に肘をかけ、まぶしい空に目を細めながら、彼はいつものようにぼそりと答えた。
でも、ちょっとだけ早口で、もしかしたら照れてるのかもと思ってしまう。
子どもたちの楽しそうな声がこだましている。
ここは時間がゆっくりと流れているよう。
昔、私も家族とこういう場所によく来ていたことを思い出した。
そのことを思うと胸が切なくなるが、
今は家族じゃなくて、一吾くんが一緒にいてくれる。
「のばらさ」
「ん?」
「もし親がそのまま離婚したら、どっちついてくの?」
「え……」
この平和な空間で、突然、何を言うのだろう。
しかも、私の両親は、別居中だけどまだ離婚してない。
ぶっそうなこと言わないでよと思いつつも、本当に選ぶことになる日が来る覚悟はしている。

