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こんなにいかつい車に乗ったのは初めてだった。
窓を全開にした車内では、低音のきいた洋楽が爆音で流れている。
「一吾ちゃんさー、どこ行く?」
「んー。なんか広いとこ」
「ぎゃはははっ! よくわかんねーよ」
運転しているのは達也さんという、一吾くんの昔の先輩らしい。
助手席に一吾くんが乗って、
後ろには、達也さんの奥さんと子ども、そして私。
「きゃははっ」
達也さんのでかい笑い声に合わせて、子どもがはしゃぎだす。
私もその子の顔を見ていたら、自然に笑みがあふれてしまった。
「のばらちゃんっていうんだよね? 子ども好きなの?」
「はい! だって可愛いじゃないですか~」
奥さんはユメナさんという、茶髪ロングのめちゃくちゃ美人さん。
チャイルドシートに座る子どもさんは2歳で、心愛ちゃんというらしい。
「一吾ちゃんやるじゃーん。こんな可愛い子連れてるなんてさー」
ユメナさんが音楽に負けない大声でそうはしゃいでいる。
いやいやいや、ユメナさんの方が超美人じゃないですか、と何か恥ずかしくなってしまう。
いつもは何気なく端を歩いているショッピング街を、
爆音のエンジンを鳴らし、車は猛スピードで走り抜ける。
車内に吹き込む風は、綺麗とはいえない音や空気のはずだけど、
不思議と髪と服を心地良く揺らしてくれる。
買い物中らしい学生や大人たちがちらっと私たちを見ては、すぐに目をそらす。
真昼間にこんな派手な音を出してみんなには迷惑なんだろうけど、
なぜか心はワクワクしていた。

