「そういえば、今度ナズちゃんがここ来るんでしょ?」
「あ? あのうざいやつ?」
「そういうこと言わないの! あのさ、言わないでね」
「何を?」
「私がここによく来てること。いろいろ面倒なことになるから」
布団をしきながら、そんな会話をする。
もちろん、私の洗顔や化粧水、服などはすでに棚の奥に隠した。
ごろんと、先に一吾くんが布団に寝転がる。
そういえば彼から借りているこのヤンキー系スウェット、何か自分になじんできたなぁ。
今度、部屋着も持ってこようかな。中学の時のジャージだけど。
「のばら」
「ん?」
「母さん、何か変わったとこなかった?」
「え。特に? 相変わらず綺麗だったよ」
「そう」
「あ、でもタクシーでここ来たみたい。遠い街のナンバーだったし、結構お金かかったんじゃない? って感じだったけど」
「…………」
電気を消して、ゆっくりと彼と同じ布団に入った。
やっぱり一吾くん、お母さんが来たこと、気になっているのかな。
それきり部屋の中は静まり返る。
バイトの日の一吾くんは、疲れているのか3秒くらいですぐ眠りにつく。
たぶん今日もすでに爆睡中だろう。
もう寝たかな、と確かめるために一吾くんの方向を見ると、
突然、腕を引かれ、ぎゅっと彼に抱きしめられた。
「……ちょっ!」
「…………」
一吾くんは無言のまま。
静まり返った中、シーツとスウェットがこすれる音だけが耳に入った。

