「とりあえず……麻衣ちゃん。今下ろす訳にはいかないからさ、話そう。どこかで」
言葉の終わりを見計らって、運転席のミナが口を挟んだ。
肩で息をする私に対し、動揺する隼人。
私は仕方なく首を縦に振ると、横に座った隼人が小さく息を吐いた。
「とりあえず雅也さんの所で話そう。響くんが居るから」
「分かった……」
まるで喧嘩でもした後みたいに、気まずい空気が二人の間に流れる。
車内には音楽はかかっておらず。
一度来た雅也さんのバーに降りる階段の前に隼人と二人下ろされた。
「一応急ぎ足ね」と。車から降りてすぐ隼人が私に言うと、私の真後ろに立ち、きっと私を隠してくれているんだろうと。
今見つかっても構わない気持ちはあるけど、雅也さんに迷惑をかけてしまうかもしれない、と頭が働き。
言われた通りに急ぎ足で階段を下りた。

