「お前の兄貴は今日から俺だ。もう恐がるな」
まさか。
慶太郎に胸を撃ち抜かれるなんて。
一生の不覚だ。
目から涙が溢れて、やっと笑った慶太郎に心底安心した事は、絶対内緒にしてやる。
再び私の頭を抱きしめると、
「バカな妹作っちまった。はははっ」
雰囲気を普段と変わらないものに戻し、いつもの調子で笑った。
私を好きだと言った慶太郎の気持ちが“妹”に全て詰まっているんだと理解したからこそ、流れた涙。
慶太郎に特別な感情なんて持ち合わせていないし、寧ろ“兄”と言えば私の中では雄大がイコールなのにも関わらず、その言葉が胸に響いたのだ。

