頭を下げて踵を返し、中へと戻ろうとした……

普通に振る舞おうとしても、心臓は可笑しな動きをしているのは自分でも分かる。

目の前で深呼吸をする訳にもいかないから、と思ったのに。


「昼休み、何時から?」

「……っ」


足を思わず止めてしまう。

立ち止まらなければ、“お客さん”に対する態度は完璧だった筈なのに。

私の前に回り込んだ隼人は……


「いつまでそうしているの?」


これは俯いている事ではないことを、私は知っている。

体にゾワリと鳥肌が立つ。


「今日は本当に一人で来てる。響くんたちだと目立つから、俺が来た」

「……」

「困らせるって分かってる。でも時間がないんだよ」


うつむいていた顔が、隼人の言葉に無理矢理頭を上げさせられた。