店のドアが開き、お客さんが来店した音がして。


「いらっしゃいま、」


振り返りながら。

思わぬ来客に息を飲んだ。



「おすすめ、ありますか」

「え、あ……」


以前より少し寂しげに笑う、隼人の姿がそこにあった。


短髪の髪は少し延びていて。
茶色に染められていた髪の登頂部からは、少し黒が出てきていた。

美舞の誰かがバイト先に来るなんて想像していなかったし、偶然にしてはおかしい。

だって私がここでバイトしているのはみんな知っている。

隼人だって夏休みここに迎えに来てくれていたのに。


パン屋は他にもあるし、今日だけのケーキを買いに来たにしても、近くにケーキ屋は二軒もある。