「なあ」



中学一年、暑い夏の日の放課後。

あの日のお弁当は、たしか甘い卵焼きが入っていた。


ミンミンと騒がしい蝉の声と、さんさんと降り注ぐ太陽。

閑散とした自転車置き場、部活動の始まる運動場。




「俺に音楽、教えてよ」



にっと笑った彼は、綺麗な青空を背負っていた。