「……っ」



ふわりと私の体を彼の匂いが包む。

抱き締められているんだ、と理解したのと同時に、彼の声が耳元で響く。



「ありがと結梨。……ごめんな」



ゆっくりと離れていった温もりに、我慢していた涙が次々に溢れ出す。



「……気付かないでよ、バカ」



好きだった。大好きだった。

あんたの恋を私の恋にしたかった。



だけど、苦いものは苦手なの。

奪ったビターチョコも、この恋も。



「……ばいばい、壱」



明日からは、普通の友達として傍にいられますように。

いつもみたいにくだらない話で盛り上がれますように。

彼が彼女と幸せでありますように。