黒崎さんが一歩歩く度にそこには彼しか通ることの許されない道が出来る。







……ここにいたらダメだ。







もうこれ以上黒崎さんの姿を見ていると更に深い穴に突き落とされるような気がして。ひっそりとこの場を立ち去ろうと後ろに私が戻れるスペースがあるか確認し、最後に一度だけ黒崎さんを見ようと視線を向けると。











「……え?」








いつもどこを見ているか分からない男と、目が合った気がした。








それは気のせいではないのかもしれない。








ただ真っ直ぐ歩いていた彼は突如としてこちらに歩いて来る。







「え、待って待って黒崎さんこっち来るんだけど!?」




「キャーーー!!」




「ヤダ嘘!目ぇ合ったヤバイ!!!!」










一歩一歩その距離は近づいて来て。







自然と誰もが黒崎さんの通る道を作りながらも、彼が自分の目の前で足を止めないことに落胆していた。