とある悪女の物語。







ガラリと背後で扉が開いた気配に振り返った。



「黒崎さん…?」



そして私は思わずそこにいた黒崎さんに目を見開いた。



どうして、と思うけれど直ぐに黒崎さんが茉莉をここまで運んでくれたのだと思い出す。



お礼を言おうと口を開こうとしたけれど、圧倒的な程の威圧感を晒し冷たい視線を向けられた私は背筋に汗を流すことしか出来なかった。




「……こいつの友人か。こいつは掌を10針縫って暫く手を使えない。親に連絡しといてやれ」




「……」



10針、という言葉に思わず蒼褪める。けれどその次に続いた親と言う単語に私は思わず茉莉に視線を向けてしまった。




茉莉の、ご両親。




「……もう茉莉の両親には連絡が行ってますか?」




自分でも酷く固い声だなとは思う。それを黒崎さんは感じ取ったのか怪訝そうに顔を顰め、「いやまだだ」と言った。



その言葉に少し安堵して息を吐いた。