とある悪女の物語。








ユリは両手で絶対扱い慣れていないナイフを握りしめていて、あの女は真っ青な顔をしてナイフをただ見つめている。





ユリの取り巻き達はユリを止めずただその傍にいるだけだった。






……それ、犯罪。






今までユリたちがあの女に散々やってきた嫌がらせはまだ可愛いものだった。





あの女の精神をズタズタにするには十分であったけれど。





それでもこんなブッ飛んだ方法じゃなかった。






「…ねぇ、約束してよ。もう黒崎さんに近づかないって」





ユリはどこか虚ろな目でナイフを握り直す。





……この女本気?え?



目の前の光景がどこか理解し難い。ナイフだなんて非日常的なものを友人が握って人に突き付けているからかもしれないし、こんな光景一生目にするとは思っていなかったからかもしれない。




「……っ、わ、私は…!何があっても絶対に離れない!!!」



私は何でこんなことをしたのかは今になっても分からない。




大嫌いな女のに。この女のせいで私は苦しんでいるのに。



逃げることもせず何をするべきか全く分かっていない馬鹿な女に小さく舌打ちを打った



どうして逆上させるようなことを言うのか。そんな自己陶酔甚だしいことばでユリを犯罪者に仕立て上げたいのか。




こんな状況でも私はユリの肩を持つ。





「ユリ!」





あぁもう本当何でそこで虚勢を張るのユリの気を静めなさいよ!なんて思いながらもボロボロの体で走り出した私。




歩くことさえダルいと思っていた私が必死に足を蹴るけれど、視界が回って上手く動けない。




でもユリ。流石に殺傷事件は嫉妬の範囲超えてるから。それに気づいてよねぇ。