わたしは年下の幼馴染に振り回されています

 心臓が高鳴るのを覚えながら、その教室の前に行く。ノックをしようと右手で拳を作ったが、その拳を解く。そして、ゆっくりと扉を引いた。

 窓からもれている光が直接目に届く。席に座る拓馬の姿が視界に入ってきた。

「拓馬」

 わたしはいつもよりも大きな声で彼の名前を呼んでいた。

 拓馬は振り返ると、ゆっくりと立ち上がる。いつもはわたしと顔を合わせるたびに笑っていたのに、そのときだけは笑顔を浮かべなかった。

「どうかしたの?」

「何でもないよ」

 拓馬はそう言うと、はにかみながら微笑んでいた。その彼の笑みはわたしがそれ以上そのことで聞くことを拒んでいるような気がした。

「先輩たちは?」

「昇降口にいるんだって」

「分かった」

 そこでやっと笑顔を浮かべる。その笑顔を見て、今日が二人で帰る日でなくてよかったと思った。

あんな拓馬を見た後で、どうやって話しかけていいか分からないからだ。

「行こうか」

 拓馬の顔をできるだけ見ないようにして、目を細めた。