わたしは年下の幼馴染に振り回されています

 田中くんは顔を伏せ、悲しんでいるのかいないのか分からない高い声を響かせる。


 彼も奈月のことが好きなうちの一人だったということは知っていた。

 なぜ、当の本人で私を差し置き、里美の言葉なら素直に信じられるのかと疑問を持つが、今までの経験上、気にしても無駄ということだけは分かっていた。

 今年の新入生ということは二歳差か…。

 そこまで考えたときに笑顔の耐えない男の子のことを思い出していた。

さっきは思い出す直前に振り払えたのに、今回は失敗したようだ。

彼は笑うと本当に可愛い子だったのを今でもはっきりと覚えていた。

 席を立っていた里美が私の前の席に座る。彼女は私の顔を覗き込み、いたずらっぽく微笑んだ。

「本当、美月は男っ気がなかったよね。この六年間。でも、正確には四年かな」

 四年という言葉で、彼女が誰のことを言いたいのかすぐにわかる。

「余計なことは言わないでよ」

 男っ気って、あいつをそんな風にカウントされると困るからだ。

あいつはそんなんじゃない。ただの幼馴染で弟みたいな存在だったのだ。


「四年前ってことは、中二の頃、彼氏がいたの?」

 佳代は意外そうな顔で私の顔を覗き込む。

「そんなんじゃないから」

 彼氏じゃない。でも…。

 私は思わず左手の小指の先で唇をなぞる。

 キスをしたことはあった。