頭をたたきつけるような音が響き渡る。

わたしは重い体を動かし、枕元に置いてある携帯を手に取る。

アラーム音を消すと、重い体をゆっくりと起こした。

 締め切ったカーテンの隙間からは春を感じさせるうららかな日差しが遠慮がちに差し込んできた。

今日は拓馬と待ち合わせをしていることもあり、いつもより目覚ましを十分ほど早く設定した。

待ち合わせに遅刻をしてしまうことは避けたかったからだ。

昨日は早く寝たこともあり、目覚めはいつもよりは心なしか体も軽い。

とりあえず先に飲み物でも飲もうと思い、ベッドから出る。

 一階に行くといつもよりリビングが心なしかにぎわっている気がした。

ドアノブをまわし、中をのぞいた瞬間、あくびをするのを忘れ、部屋の中をただ見つめていた。

 紺のブレザーに身を包んだ彼はわたしと目が合うと、目を細めていた。

「おはよう」

 だが、わたしの心境は穏やかに微笑む彼のものとは全く異なっていた。

「拓馬、どうしてここに」

「おばさんから昨夜、電話がかかってきて、家でごはんを食べたらって言われたから言葉に甘えることにした」