部屋の中には紅茶の甘味のある、ほのかな香りが漂っている。

 横を見ると、先ほど見とれていた姿がある。

彼は子供っぽさなどないような落ち着いた笑顔を浮かべ、紅茶を口に運んでいた。

 正面には奈月が座り、その隣には髪の毛を肩の辺りまで伸ばした女性の姿があった。

彼女はわたしの母親だ。優しい光を放つ目元に血色のよいふっくらとした赤い唇。

今は年よりもずいぶんと若く見えるが、昔は実年齢よりもかなり上に見られていたと父親から聞いた。

その顔立ちは隣で涼しい顔をしている少女によく似ていた。

 母親はカップから口を離すと、息を吐く。

そして、首をわずかに傾けて目を細める。

「本当に久しぶりよね」

「四年ぶりですね」

 拓馬は何を聞かれるか分かっていたのか、すぐに返事を返していた。

 その落ち着いた態度はわたしの知る「少年」だった彼のものとは異なっていた。

今日、彼に見とれていたことが不意に脳裏に横切る。