「少しだけ用があるの。帰りを待つほうがヒマかな」

 意味深な笑いを浮かべた彼女と一緒に学校に行く。だが、彼女はわたしに一言断り、道をそれる。そして、古ぼけた民家の前で足を止めた。

そこには三原と書かれている。千江美の名字だった。

 奈月は門を開けると涼しい顔で中に入っていく。

 わたしは戸惑いながら辺りを見わたし、中に入る。

 そこには陽の光を浴びながら毛づくろいをしている猫の姿があったのだ。

「猫ってかっているの?」

「少し前からね。今でも餌はあげ続けていると思う。千江美のおばあちゃんは猫が苦手だったらしいから、亡くなってから。一昨日聞いたんだけど、おばあちゃんが亡くなる少し前に捨てられているのを見つけたんだって。

おばあちゃんが亡くなった日もこの猫と一緒にいて、気付くのが遅れたことをずっと気に病んでいたみたい。自分が引っ越したらこの猫たちはどうなるんだろうと言っていたの」

 奈月は憂いた目で彼らを見つめている。

「拓馬のお母さんに言えばよかったのに」