六月も半ばに差し掛かっていた。拓馬から母親の話が出てくることはあまりなかった。
予定は狂うものだし、戻ってきたら母親からそれとなく聞かされるとは思っていたので聞かないようにはしていた。
拓馬と千江美はいつでも一緒だった。拓馬が中学生の親戚と一緒に暮らしているという話はすでに広まっていた。
その噂が耳に届くのとほぼ同時に彼女と奈月が同じクラスだと知り、奈月が一足早く拓馬がこちらに戻ってきたことを知っていたのに納得できた。
「これ、どう思う?」
拓馬が遊園地のチケットを差し出した。
一瞬、拓馬が誘ってくれたのかと期待する。
「こういうのって中学生くらいで行っても楽しかったもの?」
中学生と聞き、恥ずかしい勘違いをしていたことに気づく。千江美のために用意したものだったのだろう。
「本人に聞いてみたら? きっと喜ぶんじゃない?」
「でも、母親との思い出もあるだろうから、行きたくないのかなって思ったんだ。毎年、ここのチケットを母親が親戚からもらうんだよね。で、今年も送ってきたんだけど」



