わたしは年下の幼馴染に振り回されています

 佳代に呼ばれたはずなのにわたしに挨拶をしている。

「じゃあね。遅刻したら先生に適当に言っておいてあげるよ」

 佳代と里美は笑顔を浮かべるとその場を立ち去ってしまった。

 わたしと拓馬はその場に取り残され、通行する人の邪魔にならないように廊下の端に寄る。

 そんなに長い間見ていなかったわけでもないのに、彼を見ると言葉が出てこなかった。

「今から理科室?」

 頷くと彼は歩き出した。わたしもそのあとについていく。

 途中で彼は足を止める。職員室に近い廊下で普段から人通りがほとんどない場所だった。

 あたりはしんと静まり返り、遠くから人のざわめきが聞こえてくるだけだ。

「この前の俺の従兄妹のこと覚えている?」

 わたしは胸に抱く教科書の力を強めた。

「彼女と一緒に暮らすことになったんだ。だから連絡も全然取れなくてごめん」

 彼の言葉に頷いた。

「来週には母親が一時的にだけど来ることになっていて、そこであいつを転校するか、ここに残らせるか話し合いをすることになっているんだ」