わたしは年下の幼馴染に振り回されています

「拓馬君のこと、気になるんですか?」

 先ほどのやわらかい声とは異なり、どこか強さを含めた声。彼女の顔から笑顔が消えていた。それどころか鋭い視線をわたしに送っていた。

「拓馬君の好きな人だって聞いたけど、ぜんぜん可愛くないじゃない。本当に普通なんですね。正直期待はずれでした」

 きっと多くの子が思っているであろう言葉だ。胃の奥の部分が疼くように傷んだ。

 わたしは彼女から目をそらす。そんなわたしの視界に長い影が現れた。


 顔をあげると、不思議そうな顔をした拓馬の姿があった。

「悪い。帰ろうか」

 彼の手には先ほどの電話はない。もう話は終わったのだろう。

 本田さんはわずかに上半身をかがめ顔の前で手を合わせていた。

「わたし、用事を思い出したから帰るね」

 初対面のときのような笑顔でわたしを見る。そのとき、口元がわずかに変化する。

「またね。坂木先輩」

 彼女は軽い足取りで帰っていく。彼女は拓馬が好きなのだろう。

 あんな可愛い子に好かれているのに、拓馬の好みは本当に分からないと思う。

 本当のことを言っただけ。それが分かっていても、帰りがけ、拓馬と言葉を交わすことがほとんどできなくなっていた。

結局ほとんど口をきけないまま、拓馬と別れることになった。

 拓馬は不思議そうな顔をしながらも、理由を聞いてくることはなかった。