春の暖かい日差しが窓から遠慮なく差し込んできた。

そんな光のせいなのか、睡眠不足のせいなのか、体全体に錘がのしかかったように体が重い。

今日は素直に休めばよかったのかもしれないと思うほどだった。

「美月」

 いつもテンションの高い声が聞こえてきた。

顔を動かして、横を見ると、そこには髪の毛を耳元で二つに結んだ女の子の姿があった。


彼女は大きな瞳でしきりに瞬きをし、私をじっと見つめている。

何かに強く魅入られたかのような態度だが、それは彼女にとって珍しいことではなかった。

それどころかよくある日常のワンシーンだ。

「何? 佳代」

 筆坂佳代は肩を震わせ、私の肩をぽんとたたく。

「水臭いなあ。彼氏ができたなら言ってくれればよかったのに」

 その言葉に思わず体を起こす。

「誰のこと?」

「美月があの一年のかっこいい人とつきあっているって話。美月は年上が好きだって言っていたのに、そうでもなかったんだね。それとも彼が特別なのかな?」

 彼女はにやけた顔を隠すためなのか、口元に手を当てていた。

だが、今でも笑っている彼女の目元を見ていると、そんなことは無駄なことだと思わざる終えない。

 彼女は私がその言葉を認めることを期待していたのか、私の顔を覗き込んできた。