砂糖菓子より甘い恋１

「気にかけているのは毬（まり）のことだよ」

毬姫……
龍星はその名前に聞き覚えはなかった。

「千の妹で、もちろん私の実子だ。器量だけていえば千を上回る程なのだが」

千姫は昔から有名だった。しかし、毬姫の名前は噂好きな都人の間にも上ったことはなかった。

訝る龍星の視線に気付き、タヌキはパチリと扇子を鳴らして隣の部屋に待機する女房に告げた。

「毬をここへ」

「はい、ただいま」