二人は、車が山をおりる間、一言も言葉を交わさないままだった



外の景色を眺めながら、窓越しに智也の横顔を見つめる



出会った時より、少し大人びたその横顔




「ふっ..」



そんなことを思っていたら、いきなり智也が笑いだした



「お前、見すぎ」



ガラスの中で二人の視線が重りあって、智也の顔から笑顔が消えた




「そんな泣きそうな顔すんじゃねぇよ..」




智也は、瑠奈に伸ばしかけた手をハンドルに戻して、強く握り締めた




再び、無言になる車内





見慣れた街並みが近づくにつれて、別れの時間も近づいてくる




現実から目を背けるように、瑠奈は下を向いた





伝えたいことは




たくさんあるのに..












「..ついたぞ」




車が止まると同時に、智也の声が静かに響いた





ゆっくりと顔をあげると




「..ともゃ..っ」




堪えていた涙が溢れた―..






車が止まった場所は





二人の思い出が





二人の涙が





二人の笑顔が





たくさんつまった






あの場所だったから―..