「いやー、いいライブだったな」
会場を出ると、龍が満足げに笑う。
ほんと、いいライブだった。
ううん。
いいライブ、なんてもので片づけられない。
私は音楽のことはあまり詳しくない。
でも、
胸を打たれる歌詞。
テンポのいい音。
ファンへの気遣い。
そして、心から音楽を楽しむ姿。
本当に彼らは音楽が好きなんだって聴いていて伝わってきた。
「…私、今日のこと絶対忘れない」
「そうか」
「あ、龍!私、メンバーが出てくるの
待ってるから先帰っていいよ?」
「お前一人で大丈夫か?」
「ん?なにが?」
「いや、ほらもう外暗いしさ…」
なんだ、そんなこと?
こういう時まで優しいな、龍は。
「なに〜?心配してくれてんの?」
「うっせ」
あれ、照れてるのかな?
「ふふ。早く帰りな?今日お母さんの誕生日なんでしょ?」
「あ、やべ!忘れてた」
龍は慌てて、時計を確認する。
「じゃあ悪いな!気をつけて帰れよ!」
そう言うと、ものすごいスピードで走っていった。
足、早っ……。
