「なぁ、お前…本当にすんの?」
ライブ当日、会場に向かう私に龍が問いかける。
「何を?」
「出待ちだよ、出待ち」
「あったりまえじゃん!
龍わかってる?!
こんなチャンス滅多にないんだから」
「いや、そりゃそうだけどさ」
何か言いたげな龍の顔。
ふん。
どうせそれくらいじゃ相手にされないだの
バカバカしいだの思ってるんでしょ?
わかってるもん、そんなの。
でもいいの。
たとえ迷惑でも、彼のあの綺麗な瞳が
一秒でも私を見てくれるなら。
「ほら、早く行くよ〜」
「いってえ!!」
龍の背中をバンっと叩いて私は会場へと走った。
