呼べない。 私なんかが、立ち止まらせることなんてできっこない。 ギュッと、爪痕が残るくらい強く掌を握りしめた。 痛い。この痛みが、だんだんと心臓の元へと舞い込んでくる。 雨の音がより一層強くなったように聞こえて、反射的に窓の外を見た。 大粒の雨が降っている外は、寒そうだった。 「帰ろうかな」 虚しく響いた独り言は、雨の透明さを引き立てただけだった。