家に帰る頃には、 さっきのあのことは忘れていた。 「莉加」 黛さんの声が、 あの電話の声が思い出された。 「あ、…ただいまです」 「お前、なんであの電話途中で切った?」 「急な呼び出しがあって」 「そうか」 黛さんの、眼鏡の奥の目が まるで、あたしのことを悟っていたみたいに。 もしかして、 見られてしまったのか…………