野崎兄弟のThousand Leaves(あかねいろ Thousand Leaves!番外編)

優斗が顔をぐちゃぐちゃした。


「なんでかなぁ…なんで別れたんだろう?」

「優斗が茜ちゃんのハナシを聞かないからでしょ」

「聞いたってアイツ、ロクなこと言わねーんだもん」


なにそれ。

ロクなこと言わないのは優斗なのに。


「しかも、ぜったいウソだと思うんだけど、総史と付き合ってるって…」

「ええ!やった!」


その手があったかあ!


優斗がムッとしたように顔を上げた。


「なんで?」

「だってそしたら、また遊びに来てくれる!」

「いやいや、ぜったいウソ。ぜったい付き合ってない」

「優斗より総史の方がいいよ!ちゃんと茜ちゃんを守ってくれるし!」

「オレだって茜のこと考えて色々やってたんだよ。それを茜が、ぶち壊しにすんだ」

「はぁ?ぶち壊したのは優斗でしょ。茜ちゃんに乱暴までしてさ」


優斗が不思議そうな顔でボクを見た。

「乱暴…?」

「別れたときに、茜ちゃんをつかんで振り回してたじゃないか!」

「してないよ。女にそんなこと、するわけないよ」


ウソでしょ…

本気でおぼえてないんだ…



ー止めろ!女の子になにやってんだ!ー




くやしい。



ースッゲー仲良かったんすよ!ー



くやしい。




「優斗は、ボクをイジメてた奴らと何にも変わらないよ…。

相手がどんなに苦しんでたって、自分が良ければそれでいいんだ。

相手が苦しいよって言っても、それは相手が悪いことにしちゃうんだ。

茜ちゃんの気持ち考えたことあるの?」


優斗は、ボクが外国語を話しだしたみたいな顔をしている。


「茜ちゃんはね、自分だってツラいのに、最後までボクのことを考えてくれてた。

みんながボクのことを愛してるって言ってくれた…

本当に優しい人ってね、そういう人のことを言うんだよ。

優斗は、ただ怒鳴って、茜ちゃんの話も聞かないで、暴力をふるって…」


「暴力なんて、ふるってないよ…」

「ふるったんだよ!!」


もうノドなんカンケーない。


「優斗は、サイテーだよ。パパの言ったとおりだ。

いくら日本で一番だって、ニンゲンとしての価値がないよ。

ボクは決めたんだ。絶対にオマエみたいなヤツには負けないって!」


立ち上がって、伝票をつかんだ。

優斗があわてて、伝票を取り上げようとした。


「茜ちゃんの代わりにボクが言ってあげる…!」



なにか、よっぽどヒドイことを言ってやる。



だけど、



目の前にいる人は…ナンダコレ。


捨てられた子犬じゃないか。


そして、


ボクの兄弟だ。


生まれた時から、そこにいた。



「優斗…さよなら」