色とりどりの自転車が、玄関の前を埋め尽くしている。


今日もミスドコースか。

家に背を向けて歩き出した。

後ろから、甲高い女の子たちの声が聞こえた。


歩道は、舞い散るイチョウの葉で黄色一色だ。

「総史くん!」

後ろから声を掛けられた。


「家、入らないの?」

この子は・・・見たことはある。

優斗の取り巻きの内の一人。



「あ、うん。甘いもの食べたくなって。ミスド行く」

「私も一緒に行ってもいい?」

「いいけど・・・けっこう長居するよ」

「コーヒーでしょ?お替わりし放題だもんね」


ま、いっか。

女の子が追いついてきた。


ミスドまでは5分もない。

店に入るといつも同じ注文をするから、店員さんもよく覚えてる。

「こんばんはー。ブラックですよね」

「はい」



女の子と席に座る。

「家で何か食べたんじゃないの?」

母さんは料理が好きで、人数が多くなるほど燃えるタチだ。

「うん。そうなんだけど、最近なんとなく会話についていけなくて」

「ふーん」


それでも家に来るのか。

女のグループって、そういうとこが面倒くさそう。

女の子は、食べにくそうなクリーム入りのドーナッツを慎重に口へ運んでいる。


「女の子の食べ方って可愛いね」

「え・・・?」

「食べ方が可愛い」


女の子が、真っ赤になった。

あれ。

変なこと言ったかな?

え?これ、セクハラですか?


「ごめんね。変な意味に聞こえたらゴメン」

「い、いいの。そ、そういう、言ってくれるのって嬉しい」


セクハラ・セーフ。