野崎兄弟のThousand Leaves(あかねいろ Thousand Leaves!番外編)

クリスマスが近づいた。


こういう時期は、どうするのかな。

おごるにしても、そんなに豪勢にはいけない。

学生ですから。


友達に聞いてみたくても、そこは無骨で有名な県立高校。

「うちは昔から真言密教だ!キリストの誕生日を祝う義理なんぞない!」

…こんなばっかり。


「どこか、行きたいところある?」

「あのね、あの…」

言いにくそうに、花純が見上げた。


「みんなでチーズフォンデュやろうって…総史くんの家で」

「へえ」

「チーズフォンデュって、一度食べてみたくて」

「ああ、じゃあそれでいいだ?」

「うん。家から食材を持っていってね、チョコもやるんだって」

「腹、壊しそう…」


じゃあ、あとはプレゼントか…。


花純を見た。

やけに口数が少ない。


「どうした?」

「あ、ああ。受験のこと考えてた」

「もうすぐだね」

「うん…」

「大丈夫だよ」

「うん…」


花純の志望校は、ごくごく平均的な難易度の市立高校と東京の私立。

その私立「鷺林(さぎばやし)女子高校」の名前をきいた時は、ちょっと意外に思った。

派手な生徒が多いことで有名な女子校だ。


「総史くんが教えてくれたから、大丈夫!」

「不安なんだろ」

花純の頭を撫でた。


「カラ元気出さなくてもいいよ」