ゆめは、静かに聞き耳をたてている。



俺は…それどころじゃない。



心臓が飛び出そうなぐらい、バクバクしてる。



悟られるな…。



ピクリとも動かずにジッと耐える。



「あの声、桃ちゃんだ。あたしのおまじないを実行する前に、紫藤くんと話せるなんてすごい!」



騒いだら聞こえるっつの。



小声だけど、ゆめの声は高くて通るから、紫藤たちに気付かれるかわからない。



コクコクと頷くと、ゆめは満足したみたいだった。



しばらくすると、誰かが教室を出てドアを閉める音がした。



少し開いたドアの隙間から、廊下を眺める。



先に俺らの前を通り過ぎて行ったのは、紫藤だ。



もちろん、俺らの存在には気づいてない。