「あたしっ…帰るね」



ドタドタと大きな音をたて階段をかけおり、玄関から飛び出した。



胸の動悸が激しい。



一体どうして、こんなことになったの?



家に帰ってからも、なにも手につかない。



思い返すのは、目隠しをされたときのあのシーン。



やっぱりあれは、キス…だよね?



目を開いたときの、カズマの表情が目に焼きついている。



今まで、こんなに近くにいたのに。



カズマの顔を、あんな至近距離で見たのは初めてだった。



切ない表情がなんだか大人びて見えて、いつものカズマじゃないみたいで…。



やば…。



どうしてこんなに、ドキドキしてるんだろう。



本当におまじないが効いてきたの?



今日のことを思い出すだけで、ドキッとする。



それに、こんなおまじない知らないよ!



本の中をくまなく探すけど、載ってない。



まさか、カズマにもすごい力があったのかも…。



あたしみたいに、夢でおまじないを見るような能力をカズマも手にしていた?



空想し始めると、もう止まらない。