本堂の方から、紫藤が戻って来た。



ひとりだ。



俺のもとに来ると、目の前の女に笑いかけてる。



…チャラ過ぎだろ。



でもその女は、そのままゆめのところへ行ってしまった。



「あれ、1組の1番人気の子じゃん。カズマさん、モテますねぇ~」



「気持ち悪い言い方すんな」



「ははっ。確か、海野凛ちゃん」



名前すら、聞いてなかったことに気づく。



デートするって、連絡先さえ知らねぇし。



「桃ちゃんは?」



「お前の言う通りにした。なんか言いたそうにしてたから、やんわり断った。これでよかったんだろ?」



「あぁ」



これでもう、桃ちゃんが迷うことはないよな。



他のことに目を向けて、少しでも早く立ち直るべきだ。