「ねぇ、聞いてる?」




つり革に手を引っ掛けたまま、俺の顔を覗きこむようにしてくる。




途端電車が揺れて、座席に座ってる人の膝の上に覆いかぶさる寸前。




ガシッとゆめの腹を腕で抱えた。




バカ…なにやってんだよ。




「きゃ~、ごめんなさい」




座っているのはスーツを着たサラリーマン。




慌てて謝るゆめを一瞥すると、あんまり関わりたくないのかそのまま目を閉じた。




ホッ…。




「ばーか」




「カズマ~、ありがとう。あたし、今飛んで行きそうだったよね。フフッ」




危ないとこだったのに、なんでそんな嬉しそうなんだよ。




こいつのこーいうとこ、マジで…嫌いじゃない。




あぁ、俺の方がばかじゃん。