「来てたの美空ちゃん!
今日も可愛いねぇ!
写真、撮って良い?」

「やめろバカ!」

ぎゅっと美空を抱きしめて、顔を見せないように閉じ込めた。
こいつは本当に撮りかねない。

「ははは、しないって!
やだな、優斗は疑い深くて」

辞書を勝手に俺の本棚から取り出して、じゃあね、と出て行った。
くそ、バカ兄貴め……。

「やだ瀬田、苦しいよ……?」

腕の中に閉じ込めた美空が、くぐもった声で文句を言っている。
今日も、俺と美空は楽しい時間を過ごせている、と、思う。

バイトの時間まで、こうしていよう……。
そして、旅行は絶対に成功させよう……。

腕の中のぬくもりに、そんなことを思う俺だった。