「……おいで、美空。
泣いて良いから」

「うっ……うぅ……」

彼女は、弟の腕の中で静かに涙を流した。
それを受け止めて頭を撫でる弟が、男らしく見えた。

ここは素直にそっと、立ち去ってふたりっきりにしたほうが良いんだろうけれど……。
俺は、どうしても聞いてみたくなった。

「こんなこと、よくあるのか……?」

「たまに……。
美空が可愛すぎるのは、罪だ。
俺、結構大変」

彼女を抱きしめたまま、真顔でそう言う弟は、きっとのろけて冗談を言っているわけではないんだろう。
本気だ。

「そ、そうか……」

可愛すぎる彼女を持つと、大変だ。
俺も、美空ちゃんをこれからは今まで以上に気にかけようと思った。
そして今度こそ、二人を残してそっと立ち去った。