「では、これより会議を始めたいと思います」


午後一時二十分。議長を務める専務の進行で会議ははじまった。

会議室の楕円のテーブルを囲むのは、社長、専務、常務、執行役員が二名と、秘書課からは涼子さんと私。

当たり前かもしれないけれど、社長以外のお偉いさんは貫録のある中年男性ばかり。

涼子さんは堂々としているけれど、私はもともとない存在感をさらに消すことに必死になって、小さくなりながら一番入口に近い席に座っている。


「議題は資料にある通りです。しかし実は、社長以外の役員からはすでに賛同の意思を確認済みでして、あとは社長の許可を頂くだけ、となっております」


ホワイトボードの前にいる専務はきっぱり発言し、隣に座る社長の顔色を窺う。

他の重役たちも彼に注目する中、本人は冷静な様子で資料を眺めている。

緊張感が漂う中、資料を読み終わった社長は静かにそれを置くと、重役たちを見渡して口を開いた。


「国産ハチミツ関連製品の取り扱い中止……それが本当に会社の利益になると、皆さんお思いですか?」


質問で返されたことが予想外だったのか、重役たちが顔を見合わせて少し動揺する。

しかし、議長の専務はわりと落ち着いていた。