チキン南蛮を食べ進めながらそんなことを考えていると、涼子さんが「社長がヤバいのはそれだけじゃないの」と話を続ける。


「今回主な議題はそれだけど、社長のことが気に入らない重役は、他にも色々と突っ込んでくると思うわ。いつも嫌味ばかりなのよ、あの偉そうなオジサマたち」


実際偉いのでは……?と突っ込むのは心の中だけにして、私は他のことを聞いてみる。


「でも、社長ならそんな嫌味くらい倍にして返すんじゃないんですか?」

「まあ、いつもの彼ならね。でも、今は少し精神的に弱ってるから……」


……社長が精神的に弱ってる?

耳を疑う台詞に、思わず眉根を寄せてしまう。


「あはは、そんな顔しなくたって。でも、ホント今の社長は色々大変なはずだから、美都ちゃんが支えてあげてね?」

「その“色々大変”の内容を、涼子さんは知ってるんですか?」

「……あ。ゴメン! 聞かなかったことにして? 室長しか知らないはずのことだから……」


涼子さんは“口が滑っちゃった”というように小さく舌を出す。

そんな……。社長の事情を知らないで“支える”なんて難しいよ。

深見さんは知っているようだけど、彼に聞き出すなんて無理だし……本人、はもっと無理。

モヤモヤしながら口に入れたものを咀嚼し、淡々と食事を終えると、会議の準備をするため涼子さんと秘書課に戻った。