「それは……」


最初は彼が初恋の人だったんだと、勝手に運命を感じて舞い上がっていたけど、昨日からずっと彼の側にいてその言動を見ていると、どうしても違和感が拭えない。

それでも彼にときめいているのは否定しないけれど、頭の中には繰り返し同じ疑問が浮かんでしまう。

私が過去に会った王子様と、東郷社長は、本当に同一人物なの?……って。


「僕は悲しいですよ、美都」

「え……?」


ふと、隣から寂しげな声が降ってきて、私は顔を上げて彼の方を向く。

長い睫毛を伏せ、憂いを帯びた瞳に私を映す彼の美しさに、思わず目を奪われる。


「僕の記憶の中には、あの日のきみが鮮明に残っているというのに、きみはいつまでも思い出してくれない」

「お、覚えてますよ、私も……! ただ、社長の印象が昔と違いすぎて……戸惑っているんです」


容姿に関しては、それほどでもないけど……というか、昔よりずっと本物の王子様に近い、素敵な男性になっているから、そこに違和感はない。

でも、中身はまるで逆。

優しく慰めてくれるどころか、意地悪なことばかり言ってくるんだもん……。

しばらく気まずい沈黙が流れ、居たたまれなさから私が俯きがちになっていると、ようやくタクシーが到着した。

目の前で開いたドアに手を掛けた社長は、車に乗りこむ前に私にこう言った。